「朝起きると顎がだるい」「歯が以前より短くなった気がする」——こうした変化を感じながらも、忙しさの中でそのままにしていませんか。歯ぎしりや食いしばりは、眠っている間に起こるため自分では気づきにくく、家族に指摘されて初めて知るという方も少なくありません。
問題は、放置すればするほど歯や顎への負担が積み重なるという点にあります。このページでは、歯ぎしりが引き起こす影響と、ナイトガードによる対策について詳しくご説明します。
歯ぎしりが起きる仕組みと、その影響
歯ぎしり(ブラキシズム)は、睡眠中に上下の歯を強くこすり合わせたり、ぐっと噛みしめたりする習慣的な行為です。日中にも無意識に食いしばる方がいますが、特に問題になりやすいのは就寝中のものです。
なぜ眠っている間に起きるのかというと、浅い眠りの時間帯に顎の筋肉が過剰に活動してしまうためだとされています。ストレスや緊張が高い状態が続くと起きやすく、歯並びやかみ合わせの問題が引き金になることもあります。
歯への負担は想像以上に大きい
通常の食事中に歯にかかる力は、体重程度といわれています。一方、歯ぎしり中は数倍から十倍以上の力が加わることも珍しくありません。この力が毎晩、何時間もかかり続けると、歯はじわじわと削れていきます。エナメル質(歯の表面を守る硬い層)は一度失われると自然には回復しません。
また、歯ぎしりの影響は歯そのものだけにとどまりません。顎関節への負担から、口を開けるときに音がする・痛みが出るといった顎関節症につながることや、肩こりや頭痛の原因になることも知られています。詰め物や被せ物が繰り返し割れたり外れたりする場合も、歯ぎしりが背景にある可能性があります。
こんなサインが出ていませんか
歯ぎしりは本人に自覚がないことがほとんどです。以下のような変化に思い当たることがあれば、一度当院にてご確認されることをお勧めします。
- 朝目覚めたときに顎や首まわりがこわばっている
- 歯の表面が以前より平らになってきた、または短くなった感じがする
- 冷たいものや熱いものが歯にしみる(知覚過敏)
- 歯の根元あたりに欠けやひびが見られる
- 詰め物や被せ物が短期間で壊れることが続いている
- 口を大きく開けると顎から音がする、または痛む
- 原因不明の頭痛や耳のあたりの痛みが続いている
これらは一つひとつは些細に思えるかもしれませんが、複数当てはまる場合は歯ぎしりが進行しているサインかもしれません。
ナイトガードで守れること
ナイトガードとは、就寝中に装着するマウスピースのことです。歯科医院で型をとり、患者さんの歯列に合わせてオーダーメイドで製作します。上の歯か下の歯のどちらかに装着し、上下の歯が直接こすれ合うのを防ぐ役割を果たします。
ナイトガードは歯ぎしりそのものをなくすものではありませんが、歯と歯の間にクッションを入れることで、歯への直接的なダメージをほぼ防ぐことができます。また、顎にかかる力をやわらげる効果もあるため、朝のだるさや顎の疲れが改善したと感じる方も多くいます。
詰め物や被せ物を保護することにもつながるため、補綴(ほてつ)治療を受けた後にも積極的に使用をお勧めしています。さらに、顎関節の保護という観点から、顎関節症の予防や症状の緩和にも役立ちます。
なお、市販のマウスピースと歯科医院で作るナイトガードは、フィット感・耐久性・効果の点で大きく異なります。合わないものを使い続けると顎や歯への負担が増えるリスクがあるため、必ず歯科医師の診察を受けたうえで作製することが重要です。
ナイトガード作製の流れ
当院でのナイトガード作製は、まず口腔内の検査・診断から始まります。歯の摩耗具合、顎の動き、かみ合わせを確認し、必要に応じてレントゲンで歯の根や骨の状態も診ます。
次に、歯型を採取し、患者様の歯列に合わせたナイトガードを製作します。完成までは約1週間を目安としていただいております。採取した歯型をもとに歯科技工士が丁寧に製作し、フィット感の良い仕上がりを目指します。
完成後は実際に装着し、かみ合わせや違和感がないか確認します。必要に応じてその場で調整を行いますので、初めて使う方でも安心してお任せください。
また、ナイトガードは定期的な洗浄と、定期検診の際に状態確認が必要です。長期間使用すると素材が劣化するため、摩耗や変形が見られた場合は作り直しをお勧めしています。
歯ぎしりの根本的な改善に向けて
ナイトガードは歯を守るうえで非常に有効ですが、歯ぎしりの原因そのものに目を向けることも大切です。睡眠の質を高める生活習慣の見直しや、日中の緊張を意識的に緩めることが症状の軽減につながるケースがあります。
たとえば、就寝前にスマートフォンの使用を控える、入浴でリラックスするといった睡眠環境の整備は、ブラキシズムの頻度を下げる可能性があります。また、日中ふと気づいたときに歯を離す(上下の歯を触れさせない)意識を持つことで、食いしばりの習慣を和らげることができます。
ただし、こうした自己対策だけで解決できないこともあります。歯ぎしりの背景に歯並びやかみ合わせの問題がある場合は、矯正治療などを検討する必要もあります。まずは当院で現状を診させていただき、それぞれの状況に合った対応策を一緒に考えることが、長期的に歯を守ることにつながります。
気になる症状がある方は、まずご相談を
歯ぎしりは早めに対処することで、歯や顎の損傷を最小限に抑えられます。「自分は大丈夫かな」と感じたときが受診のタイミングです。当院では、口腔内の状態をしっかり確認した上で、一人ひとりに合った対応をご提案しています。些細なことでも構いませんので、お気軽にお声がけください。